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イベントレポート

「困った」を発明に変える——NPO法人燈がつくる「挑戦」の入り口【イベントレポート】

「夜、エアコンが効きすぎて寒くて、朝起きた時にしんどくなってしまう」
そんな日常の「困った」が、この日、「AMエアコン」という発明に変わりました。
身近な課題を見つけ、解決方法を考え、自分の手で形にする。8月9日、兵庫県立兵庫津ミュージアムで、小中学生向けものづくり体験イベント「TOMOSHIBI MAKERS CARAVAN」が開かれました。
主催は、神山まるごと高等専門学校(神山まるごと高専)の現役学生4人が立ち上げたNPO法人燈(ともしび)です。子どもたちはワークシートを手に、日常の不便からそれぞれの「発明」を生み出していきました。

取材・文=RESmedia編集部

日常の不便から、発明が生まれるまで

身近な「困った」から始める

イベントは、自己紹介やチームの共通点を探すアイスブレイクから始まりました。続いて共有されたのは、「チャレンジをしよう」「安全にものづくりをしよう」「みんなのアイデアを大切にしよう」という三つの約束です。うまくいかなくても、それは「より良くなるためのステップ」。失敗も含めて、ものづくりに挑みます。

発明の出発点は、「何を作りたいか」ではありません。

参加者はワークシートに「昨日一日にしたこと」を書き出し、その中から困ったことを探します。スタッフが例に挙げたのも、「お菓子を食べ過ぎてしまう」「ドアを閉め忘れる」「雨の日に靴がぬれる」といった、日常の小さな不便でした。

ワークシート

さらに、「なぜ困るのか」を掘り下げます。靴がぬれるなら、靴下までぬれて気持ちが悪い。学校でもその状態で過ごさなければならない。そこまで考えることで、解決したい課題が具体的になっていきます。

「何を作るか」より先に、「何を解決したいか」を考える。そこからアイデアを出し、設計図を描き、材料を決めます。

燈が掲げるのは、「挑戦を選べる未来をつくる」という理念です。今回のプログラムにも、完成品だけでなく、自分で課題を見つけ、まだない答えを考える経験そのものを大切にする姿勢が表れていました。

考える。つくる。試す。直す。

設計図ができると、段ボールや木材、布などを使った制作に進みます。

ただ、頭の中のアイデアが、そのまま形になるとは限りません。うまく固定できない。思っていた形と違う。子どもたちは材料を選び直したり、つくり方を変えたりしながら手を動かしました。

いろいろな材料から子どもたちは自分の作りたいものに必要なものを選んでいた

約50分後には、いったん制作を止めて再びワークシートへ。「難しかったところ」「工夫したところ」を振り返り、「もっと良くするにはどうしたらいいか」を考えます。また、ワークシートは、制作過程を振り返る記録にもなり、発明品と合わせて夏休みの自由研究としてまとめられるよう工夫されています。

スタッフが伝えたのは、「ただ作って終わる」のではなく、一度使ってみて、そこから改善することの大切さでした。

考える。つくる。試す。直す。

その繰り返しは、最後の発表にも表れていました。

「AMエアコン」

冒頭の「AMエアコン」は、寝ている人の様子をカメラで捉え、自動で温度を調整するという発明です。つくる途中にはパーツを加え、参加者自身が「もっとエアコンに近くしました」と改善した点を説明しました。

「リモコンがすぐにどこかに行ってしまう」という悩みからは、『お探し物探知機』が誕生。光を反射する素材を使い、さらに「音を出す」という工夫も加え、見つけやすくしました。​​

完成品だけでなく、何に困り、どう考え、どこを変えたのかまで自分の言葉で伝える。発表された作品には、一人ひとりが重ねた試行錯誤の跡が残っていました。

キャラバンを終えて、燈が見つけたもの

イベント終了後、燈のメンバーに、場づくりで大切にしたことや、実際に開催して見えてきたことを聞きました。

「自分で作った」を残すために

制作中、燈が意識していたことの一つが、手を出しすぎないことです。

カッターなど危険を伴う作業には付き添いますが、それ以外はできるだけ本人に任せました。

燈の鈴木結衣理事長は、手を出しすぎると「作ってもらった感」が残ってしまうと振り返ります。危険な場面を除けば「基本的には任せる」。完成品を整えることよりも、「自分で作った」という実感を残すことを重視していました。

鈴木結衣理事長

実際に子どもたちと接するなかで、燈にも発見がありました。

普段はあまりものづくりをしないと言っていた子も完成度の高い作品をつくっていたことから、「ものづくりをずっとやってる人じゃなくても、考え方を整理すればものづくりできる」と感じたと鈴木理事長はいいます。

さらに印象に残ったのは、ただ形をつくるだけではなく、それが「どういうふうに役に立つか」まで考える参加者がいたことでした。

「自分が想像してるよりもずっと小中学生の可能性は大きいと思いました」と鈴木理事長は続けます。

子どもに答えを渡すのではなく、自分で考え、迷い、試す時間を残す。その場の設計が、一人ひとりの発想を引き出していました。

一日の体験を、次の「火種」へ

一方、キャラバンを実施したことで、燈自身にも次の課題が見えてきました。

当初は7地域での開催を構想していましたが、実際には徳島と兵庫の2会場で実施。振り返りでは、プログラムの内容だけでなく、それを必要とする人へどう届けるかという広報面の難しさも挙がりました。

それでも、燈が重視するのは、開催回数そのものではありません。

「私たちは、“火種”を作るというのを一番に考えています」

鈴木理事長はそう語ります。一度の体験だけで子どもの人生を大きく変えるのではなく、「自分にもできるかもしれない」というきっかけをつくる。その小さな火種を、その先の挑戦へつなげていくことを目指しています。

ものづくりの相談に乗る燈の尾崎仁瑚さん

だからこそ、今回のキャラバンもゴールではありません。燈では現在、より継続的に子どもたちと関われるサービスや、さらに多くの人へ機会を届ける方法を検討しています。秋以降には、キャラバンとは別の新たな事業も構想しているといいます。

イベントの最後、燈は子どもたちに、これから困りごとを見つけた時にも、「物を作って解決できないかな」と考え、自分でつくってみてほしいと伝えました。

身近な「困った」を、自分で考え、変えてみる。その経験を一日のものづくりで終わらせず、次の挑戦へどうつなげていくのか。子どもたちの中に灯った小さな「火種」を、その先へつなぐために、燈の次の取り組みが始まろうとしています。

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