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インタビュー

第12回【後編】「教えすぎない」「評価しすぎない」——なぜFC今治高等学校里山校は、なぜ先生を「コーチ」と呼ぶのか【インタビュー】

FC今治高等学校里山校(通称:FCI)では、教員を「先生」ではなく「コーチ」と呼ぶ。入試では学科試験を課さず、定期試験も基本的に行わない。それは、勉強や評価そのものを否定しているからではない。辻󠄀校長が語るのは、「人生のオーナーシップ」を生徒自身が持つこと、一つの物差しだけで人を見ないこと、そして誰も正解を持っていない時代に「まずやってみる」ことの大切さだ。
なぜ「先生」ではなく「コーチ」なのか。何を、どのように評価するのか。そして、辻󠄀校長自身はなぜ一度離れた学校へ戻ったのか。後編では、FC今治高等学校里山校の教育を支える考え方と、その先に描く学校の未来を聞いた。

取材・文・撮影=RESmedia編集部

「先生」ではなく「コーチ」。求めるのは、共に学び続ける人

——なぜ「先生」ではなく「コーチ」と呼んでいるのでしょう。

辻󠄀校長 学校は「エラー・アンド・ラーン」の場であって、子どもたちと共に学び合う場だと思っているからです。先生が偉くて、生徒が教えられる側。先生が知っていて、生徒が知らない。もう、そういう社会ではないと思っています。私たちがやりたいのは、人生のオーナーシップを持った人を増やすことです。

「先生」「生徒」となると、先生が何か決めてくれる、引っ張ってくれる、導いてくれるというイメージになってしまう。それはよくないと考え、「コーチ」と呼ぶことにしました。あくまで共に学び合う仲間であり、伴走する仲間です。私のことを「しょーちゃん」、岡田さんを「岡ちゃん」と呼ぶようなところも含めて、余計な上下関係や、教える・教えられる関係をつくらないようにしています。

——コーチを採用する時には、どんな人を求めていますか。

辻󠄀校長 基本的には、その人自身がどのくらいチャレンジしているかを見ます。生徒に「チャレンジしろ」と言うのに、自分は学校の外に一歩も出ていない、というのは困りますよね。自分も何かチャレンジしている人を求めています。

それと、アンラーンできるか。コーチは最初、みんな教えたり、言いたくなったりするんです。でも、徹底的に待つ。生徒から学ぶ。自分が間違っていたら、それを認めて修正する。そういうことができるかも大事です。

——採用面接で、特徴的な質問はありますか。

辻󠄀校長 最後に、「生徒からどういうふうに評価されたらうれしいですか」と聞くようにしています。「先生のおかげでこうなれました、と言われた時がうれしいです」という答えをする人は、基本的には採っていません。

もちろん、生徒に感謝されて喜ぶのが悪いということではないです。でも、人を何とかできるとか、人を変えられると思っている人は難しい。生徒をコントロールしようとするような人は、あまり向いていないと思っています。

定期試験をなくし、一つの物差しだけで人を見ない

——入試では学科試験を設けず、学校でも定期試験を基本的に行っていません。そこにはどんな考えがありますか。

辻󠄀校長 私は、読み書きそろばんという一つの物差しだけで人を見ることに違和感があります。小学生の段階で、偏差値というシールを貼られる。その時、たまたま学びが伸びるのタイミングが合わなかっただけかもしれないのに、その数字を気にして、「自分はダメな人間だ」と思い続ける子もいるわけです。

一方、多様性を受け入れるという観点でいけば、やっぱりいろんな子がその場にいないといけない。学力だけで選んだら、結局同じような学力の子が集まります。だから、入試でも学力だけでは見ない。

定期テストをやらないのも、テストのために一夜漬けで勉強することに、あまり意味がないと思っているからです。

——とはいえ、定期試験がなくても、成績や評価は必要ですよね。

辻󠄀校長 もちろんです。単元テストは各教科にありますし、学びに向かう主体性など、いくつかの観点で評価して、数字も出します。

ただ、評価は教員側からすれば、「そもそも授業がうまくできているのか」を確認するためのものでもあるんです。うちの子たちは、1年目なんか「こんな授業だったら家で動画を見ている方がマシだ」と言い出すような子たちでした(笑)。「なぜ学ぶのか」「なんでこれをやらなきゃいけないのか」と散々聞いてきます。評価も、そういうことを確認するための場なのかなと思います。

AI時代に必要なのは「五感」と「まずやってみる力」

——AIが当たり前になる中で、これから必要になる力をどう考えていますか。

辻󠄀校長 最近使っている言葉としては、「五感をフル活用する学び」と、その先に「共感を生み出す力」というものがあります。文字や数字で表せる力だけでは、AIがこれだけ発達してくると、なかなか差がつかない。だから、身体知や感覚知を伴うような学びが大事だと思っています。

その先につけたい力としては、まず「やってみる」こと。先行きが見えない時代には、誰に聞いていいか分からない。聞く相手がいない。だったら誰かがやってみるしかない。やってみれば、当然失敗もする。そこで「失敗しても何とかなる」と思える力、何回も立ち上がっていくレジリエンスもすごく大事です。

——一方で、教科学習や従来型の勉強はどう位置づけていますか。

辻󠄀校長 勉強に意味がないとは全く思っていません。勉強はできた方が絶対に楽です。マイプロジェクトでも、どこまで深められるかは学力や、どれだけ頭を使えるかに影響される。学ぼうとすること、いろんなことを知ろうとすること、教養を身につけることは、すごく大事です。

「30人30通り」のキャリア。そして、学校の中から変える

校長室。取材時も、様々な人が出入りしていた。新学期はさらに来訪者が増えそうだ

——1期生が卒業を迎えます。実際の進路は、当初想像していたものと違いましたか。

辻󠄀校長 想像以上に「大学に行きたい」という子が多かったですね。もともと「30人30通り、80人80通りのキャリア」と言ってきました。大学へ行っても、就職しても、起業してもいい。本人たちに任せて、いわゆるよくある進路指導は、1期生にはほとんどしてきませんでした。

ただ、大学についてあまりにも知らなすぎて、3年生になって大学へ行きたいと思った時に大変な思いをしている子もいる。そこは改善の余地があると思っています。

その中で、一番多いのは、総合型選抜で受験を考えている子たちです。FCIには、圧倒的な活動量や実績をつくってきている子がたくさんいます。また、自分の言葉で話せる子たちが育っているので、総合型選抜では、かなり力を発揮できると思います。

——開校前の説明会では、保護者から進学実績について聞かれることも多かったのでしょうか。

辻󠄀校長 圧倒的に多かったです。説明会でいろんな話をした最後に、「で、どこの大学に入れてくれるんですか」と聞かれるんです(笑)。「やっぱり、そこが一番気になるんだな」と思いましたけど、でも心配になるのは当然ですよね。

ただ、私たちは、3年間でどこの大学へ行ったかだけで学校を評価する世界観を壊していきたいと思っています。3年で劇的に変化して成果が出る子もいれば、3年では全然分からなくて、10年後、20年後に「あの時の経験が」となる子もいる。どっちも成長だと思うんです。人を見る物差しはもっといろいろあっていいし、期間もみんなバラバラなんだと思っています。

——辻󠄀校長自身は一度学校を離れ、青森で学校の外に学びの場をつくっています。そこで何が見えてきたのでしょう。

辻󠄀校長 学校の中だけでは育てきれないと思ったので、学校の外の学びの場をつくりました。地域の人や企業にサポートしてもらって学ぶ場をつくると、そこへ来る子たちは圧倒的に成長していくんです。

でも、「ここに来ている子たちは成長するけど、残りの大多数の子たちは学校の中にいるんだよな」と思った。学校の外でやっていても、本当に一部の子しか届かない。だったら、やっぱり学校が変わっていかないといけないと思うようになりました。

また、青森の中学校で「立志式」という行事に呼ばれた時のことも大きかったです。中学2年生が一人ずつ壇上に上がって、自分は将来こうなりたいと話すんです。職業ベースで話すこと自体は、一つの考え方だと思っていました。でも、そのためには「テストで何点足りません」と必ず続く。「だからもっと英語を頑張ります」「数学を頑張ります」と。それを先生たちが「よくやった」という感じで聞いている。

先生たちには何の悪気もないんですよ。本当に良かれと思って、「もっと勉強して、いい高校へ行くことが、その子の将来につながる」と考えている。もし、こうしたことが多くの中学校で起きているとしたら、学校の中から変えなきゃだめだと思いました。

その頃ちょうど、「次の10年はもう一回学校かな」と思い始めていた。その2カ月後に岡田さんと会ったんです。そこで、より決意が固まりました。

「学校は変われる」と示す。その前に、まずこの学校をつくりきる

——FC今治高等学校里山校として、これから実現したいことは何ですか。

辻󠄀校長 毎年47都道府県から生徒が集まって、ここで育って帰っていくという流れをちゃんと安定させたい。放っておいても全国から人が集まってくる状態をつくりきることが、私に与えられたことかなと思っています。

それと、今は岡田さんがいろいろお金を集めてきてくれたりして、何とか回っているところもあるので、もう少しサステナブルな状態をつくる。まずはそこですね。

——この学校で得たものを、ほかの学校へ広げていく考えもありますか。

辻󠄀校長 全部を真似できるわけではないと思っています。お遍路や雪山体験は、うちだからできる部分もあります。

でも、例えばコーチの在り方、先生の在り方が変われば、学校は本当に変わる。それによって生徒が劇的に変わることも分かってきました。だから、そういう在り方を広めていくことはやりたいです。

それに、面白い高校はうちだけではないので、これまでの教育に一石を投じている学校と手を組んで、一緒にうねりをつくりたい。「こういう道がある」と生徒にも示したいし、今の学校の在り方に悩んでいる先生たちにも示したいと思っています。

私が学校に戻ってきたのも、新しいモデルをちゃんとつくって、「学校は変われる」と示せたら、もしかしたらオセロのようにパタパタといくんじゃないかと思ったからです。

でも、そうは言っても、まだ学校も全然安定していないので。まずは、そこをつくりきってからかな、とは思っています。

FCIのTシャツ。
「毎日着ています」と辻󠄀校長は語る。
「34°02’26.0″ 132°57’31.2″ since2024」という文字も

【前編から読む】

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