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インタビュー

第12回【中編】FC今治高等学校里山校の学び【インタビュー】

FC今治高等学校里山校(通称:FCI)では、卒業に必要な単位数を法令で定められた最低限の74単位に留め、残りの時間を探究や野外体験の時間に充てている。1年生後期には地域企業でプロジェクトに取り組む「企業ゼミ」があり、その時々の本人の興味関心で取り組む「マイプロジェクト」もある。さらに3年間で、お遍路、雪山体験、海外探究にも取り組む。なぜ、学校の時間にこれほど「余白」をつくるのか。そして、その時間を使って生徒たちは何をしているのか。中編では、FC今治高等学校里山校で実際に行われている学びについて聞いた。

取材・文・撮影=RESmedia編集部

74単位でつくった「余白」

——卒業に必要な単位数を法定の最低ラインである74単位にしているのは、なぜなのでしょう。

辻󠄀校長 意図としては、とにかく余白をちゃんとつくろう、ということです。今の学校は、とにかく詰め込んで、詰め込んで、パンパンなんですよね。私自身も進学校に通っていましたし、最初に働いた学校も進学校でした。英語が週7時間、8時間あるようなところで、それが当たり前だった。

でも、生成AIが出てきて、読み書きそろばんだけでは差がつきにくくなっている。そう考えた時に、改めてどんな力が必要なのか。そこで、余白をつくること、探究的な学びの時間を多くすること、野外体験の時間をちゃんと確保することを意識しました。

1年生は午前中で必修教科を終えて、午後から学校を飛び出すようなカリキュラムです。学年が上がるごとに取らなければならない単位を減らしていって、3年生では少ない子なら14コマくらいになります。

時間割をどこかにギュッと固めれば、残りの日にインターンをしたり、自分のプロジェクトを進めたりできます。

——実際、生徒たちはその「余白」をどう使っていますか。

辻󠄀校長 むしろ、やりたいことが増えすぎて、プロジェクトを抱えすぎてパンクする子が毎年一定数出てきます。

——その余白の時間には、具体的にどんな学びをしているのでしょう。

辻󠄀校長 例えば、1年生後期には「企業ゼミ」があります。地域の企業に生徒が入って、プロジェクトを進めます。

日本酒の酒造さんに受け入れていただいて、インバウンド向けのラベルやギフトセットの企画・開発をしたり、タオルの会社とプロジェクトをしたり。あるいは、有機栽培の農家さんと一緒に、その農作物を広めるために、商業施設の中のお店で新しいパスタを開発し、その食材を使ってもらうような取り組みもあります。

そこでは、商品開発だけを学ぶわけではありません。プロジェクトの回し方や、いろんな人との関係性のつくり方、大人との付き合い方。そういう「型」を、企業ゼミで学んでもらっています。

校長室には生徒が作った半円状の机があった。
生徒同士やコーチ(教員)との自然な対話が生まれる場所にしたいという思いから、
生徒がプロジェクトを立ち上げ、地元の木工家と協働してつくられた

「社会から孤独をなくしたい」——マイプロジェクトは一人ひとり違う

——企業ゼミとは別にある「マイプロジェクト」では、どんなことをしているのでしょう。

辻󠄀校長 本当にみんなバラバラです。その時々の本人の興味関心でプロジェクトをやっています。

例えば、「社会から孤独をなくしたい」というかなり大きなテーマを持って、ずっとやっている子がいます。「今治に探究部をつくりたい」という子もいる。学校の中だけではなくて、地域全体を巻き込んだ探究部をつくりたい、と。「アフリカに学校をつくりたい」という子もいます。

最近1on1に来た子からは、「ネイルやメイク、美容を通したメンタルのセラピーみたいなことをやりたい。それで起業したいんだけど、何から始めたらいいですか」という相談を受けました。

——そうした生徒たちの動きは、地域ではどう受け止められていますか。

辻󠄀校長 最初は本当に厳しかったです。FCIは髪型や髪色を校則で縛っていないので、開校当初は、金髪や茶髪というだけで、「あんなところに行ったら人生終わるぞ」と言われるようなこともありました。

でも、地域の方たちと一緒にボランティアをするようになって、「FC今治の子たちは、本当に1を伝えたら9、10やってくれる」と言っていただくようになりました。主体的に、自分で何をやらなければいけないのか探して動いてくれるから助かる、と。学校への地域の評価は、彼らのおかげで上がってきていると思います。

——一方で、個性豊かな子たちが集まることで、トラブルはないですか。

辻󠄀校長 トラブルの大半は寮ですね。8割方、寮と言ってもいいんじゃないかなと思います。

親元を離れて生活するので、騒音や門限、人間関係など、いろいろなことが起きます。寮の運営自体は外部の会社に委託しているので、学校と寮で考え方をどう合わせていくかも難しさがあります。

FCIの寮。トラブルも多いが、寮生活で学ぶことも多い。
ここで生活することを学び、3年生からは保護者の同意のもと一人暮らしも選択できる。
学校近くに仲間と家を借りて、共同生活を送る生徒もいるそうだ

お遍路で学ぶ「つらい」と言える力

——企業ゼミやマイプロジェクトとは別に、お遍路や雪山体験にも取り組んでいます。野外体験では、生徒にどんな変化が見えますか。

辻󠄀校長 例えば、お遍路に行ったから寮生活がよくなる、ということはあまりないです(笑)。でも、大きく変わることの一つは、「つらい時に、ちゃんとつらいと言える力」です。

お遍路では、最初はみんな我慢するんです。でも3日目、4日目になると本当にきつくなる。そこで初めて「つらい」と言って、もう全く動けなくなっていたら、気温35度の中でチーム全体が止まってしまうかもしれない。だから、もっと早く「つらい」って言わないといけないとなる。そういう経験をすると、早くSOSを出せるようになっていく。

それと呼応して、周りの小さな変化にも気づけるようになっていきます。「あいつ、今やばそうだな」と。3年生を見ると、他者を慮る力はかなり強くなっていますね。

——「つらいと言える力」以外に、野外体験で大事にしていることはありますか。

辻󠄀校長 人は一人では生きていけないとか、一人ではどうにもならないという経験をたくさんすることです。徹底的に孤独と向き合うようなプログラムもあります。

それを経ると、仲間がいてくれることのありがたさとか、「自分一人でやれることなんて、たかが知れている」と分かる。「だったら、もっと頼ればいいんだ」「いろんな人を巻き込みながらやればいいんだ」と思えるようになります。

「日常に感謝できていますか?」——海外探究で生まれた問い

——3年生の海外探究では、どんなことを大事にしているのでしょう。

辻󠄀校長 この間は南アフリカとラオスに分かれて行ってきました。それぞれ意図は少し違います。例えば、ラオスでは、「幸せとは何か」を徹底的に考えることと、命を近くに感じることを大事にしました。

帰ってきて発表会をやったんですけど、そのまとめの時に、ラオスに行った子たちが「みんな、日常に感謝できていますか?」と問いかけたんです。今、自分たちがどれだけ恵まれているのか。いろんなことを彼らなりに考えて、そういう問いを投げるに至ったのかなと思います。

【後編に続く】

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