教育サービス開発評価機構(R.E.S)が送る勉強会の第3回のテーマは「身体知」。今回は、身体知を音楽やダンスなど芸能・芸道の観点で考察したいと思います。
インタビューに答えてくださったSOAさんは、シンガー/ソングライターでありながら音楽教育にも携わっている方です。身体知の視点から見た音楽その制作、また音楽教育への想いなどを全3回にわたって聞きました。Vol.1 は、SOAさんの音楽との出会いから言葉、リズム、メロディー、ハーモニーの考察までをお送りします。
音楽との出会い
R.E.S まず、音楽を始めるきっかけを教えてください。
SOA 音楽との出会いは本当に幼い頃ですね。実家がお寺なんですけど、お坊さんが唱えるお経が最初の音楽体験だったかもしれません。そして、3歳からはピアノを始めました。
R.E.S ピアノはクラシックから始めたんですか?
SOA はい。最初はクラシックピアノでした。でも高校で歌に目覚め、声楽を学びたいと思ったのですが、父の勧めもあり、芸術大学にピアノ専攻で進学しました。結果的には楽器のアンサンブルを学ぶことができて、父のアドバイスに感謝しています。
R.E.S ピアノを学んだ経験が、今の活動にも影響を与えた部分はありますか?
SOA ピアノを学んだおかげで、ハーモニーを理解する力がつきました。バンドとのアンサンブルや楽器同士の関係性を学べたことは大きな収穫です。ボーカルだけに集中するのではなく、全体の音楽の流れを感じることができるようになりましたね。
R.E.S 一方で、歌を始めたきっかけはどんなものなのでしょうか?
SOA 中学時代にソフトボール部でキャッチャーをやっていて、声を出しすぎて声が枯れてしまったんです。中学校3年間で思春期の男の子みたいな感じで声が低くなったんですよね。
その後、ソフトボールは一生懸命やったらもういいかなと思って、高校に入ってからはただ遊んでる女子高生でした。カラオケによく行っていたのですが、その頃、今まで例えば浜崎あゆみさんとかTRFさんとか高い声をずっと歌うのがいいみたいな感じの時代だったのが、ちょっとブラックミュージックの要素があるシンガーが多くなってきたんですね。Crystal KayさんやAIさんだったり、倖田來未さんだったり。どちらかと言うと、声が低くて、格好よく歌えるシンガーがいいみたいな時代になって。普通の女の子だとその音域や深い声が出ないので、たまたま声が枯れてた私がそれを歌ったらかっこいいみたいな感じになって。
元々音楽も好きで、中学校の合唱コンクールとかでもすごく一生懸命やるタイプだったのですが、歌をやってみようかなみたいな感じでボイストレーニングに通い始めたのがきっかけです。
R.E.S なるほど。ボイストレーニングではどのようなことを学びましたか?
SOA 発声法や呼吸法を学びました。先生がゴスペルやブラックミュージックが好きな方だったので、英語の発音も教わりました。最初は男性のキーでしか声が出なかったので、声をケアしながら音域を広げる練習をしました。
ジャズとブラックミュージックに惹かれた理由
R.E.S 今もアメリカに音楽を学ばれに行っていると聞きました。プロとして活動されている中で、さらに学ばれているのはすごいですね。
SOA まだまだわからないことがたくさんあります。特に私はブラックミュージックが大好きで、黒人の歌唱法にも強く憧れています。最初はそれを学びたいという気持ちがあって、ニューヨークに行ったのですが、今も時期を見ては、レッスンを受けに行っています。
R.E.S ジャズはそもそも黒人の文化から生まれたものだと思うのですが、ジャズやブラックミュージックに惹かれた理由、またそれがご自身にどう影響を与えたか、さらには日本文化との関係についてお聞かせいただけますか?
SOA まずは身体的な違いに強い憧れを感じていますね。同じ歌を歌ったり演奏しても違う音楽に聞こえ、一般的な日本人と比べると体の使い方、歌い方や楽器の演奏の仕方も含めてとても躍動的です。それを体験すると、同じ人間なのにこれほど違うのかと驚かされます。
そしてもう一つの理由は、黒人文化におけるアイデンティティの強さです。ニューヨークでは様々な人種が共存し、それぞれの文化を誇りに思い表現しています。特に黒人文化はそのアイデンティティが強く、私にとってそれがとても魅力的です。一方で、日本人は日常生活の中でアイデンティティを意識する機会が少ないので、そうした文化的な違いに大きな憧れを感じていますね。
言葉、リズム、メロディー、ハーモニーの考察
R.E.S 作詞に関して、英語を使うこともあると思いますが、それはブラックミュージックやジャズの影響と関係しているのでしょうか?
SOA 英語と日本語の両方で作詞しますが、音楽は言葉だけでなくリズムやメロディー、ハーモニーなど、複合的な表現が絡み合っています。日本語と英語では、言葉の響きやリズムが全く異なるので、それを使い分けるのも私の作詞の楽しさの一つです。英語の方が、感情をオープンに伝えることができるのに対して、日本語はもっと繊細で、行間や余白を大事にする表現が求められます。それぞれの言語での表現の違いを楽しみながら、歌詞を書いています。
曲に合わせて表現したいテーマがあっても、日本語だとリズムやメロディーとのバランスが難しいことがあります。そういう時、英語のリズム感や軽やかさを活かして表現することがあります。特に、英語には日本語にはないビート感があって、それを利用することで音楽全体のバランスを保つことができるんです。
R.E.S 例えば、SOAさんが作詞した『Hope to see you again somewhere』の場合はどうでしょうか?
SOA『Hope to see you again somewhere(Short ver.)』
SOA 「Hope to see you again somewhere」という曲は、私が友人との別れをテーマに書いた曲です。この曲は、私の相方であるギタリストが作ったシンプルなコード進行とメロディーがベースになっていて、そこに私が歌詞を載せました。
別れというテーマではありますが、あまり重苦しくならないように心掛けました。英語の歌詞を使うことで、感情が直接的になりすぎず、少し軽やかに表現できるんです。英語には、そのリズムや響きで感情を柔らかく包み込む力があると思います。
【Vol.2に続く】
SOA(ソア)
2016年より全国のJazzシーンで活動する大阪発のシンガー/コンポーザーSOA。2020年に1st full album”Voice of Buoy”を全国リリースし、ポップなメロディラインとフリージャズサウンドが織り交ざるその稀有なサウンドスタイルはシーンで着実に放つ光を強め続けている。Jazz.Soul.Brazilianなど多彩な音楽要素を取り入れたクロスオーバーサウンドから成される「新たなジャパニーズポップ」の構築を目指し、コロナウィルス感染拡大や天候災害によって混乱・停滞している世の中へ希望の光を歌うEP「讃」「U」をニューリリース。
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