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RESの視点

【RESの視点】Vol.2 啐啄同時の悦び

雛がかえるということは、どういうことか。

「啐啄同時」

禅宗の文献である『碧巌録』という公案集に「啐啄同時」という言葉があります。

  • 雛鳥が卵の内側から殻を破ろうとする(啐)
  • 親鳥が外側から殻を叩く(啄)

というメタファーによって、

  • 弟子の内なる悟りへの衝動(啐)
  • 師の外からの導き(啄)

という師弟関係のあるべき姿を表現しています。

教師は、生徒の状況を見て、タイミングよく導かなければならない、という意味にとるのが普通です。

「卵の殻」を破るということ

しかし、ここでは、「卵の殻」の方に着目してみたい。

これは、「悟り」、つまり広い意味での学びが、非連続であることを示します。
水の温度が単に上がったり下がったりするのではない。水が気体となって水蒸気と呼ばれたり、固体になって氷と呼ばれたりする変化です。
これを「相転移」といいます。「相」、すなわち「フェーズ」が変わるということです。

「フェーズ」が変わるのは生徒です。教師は、生徒の代わりに「フェーズを変わってあげることはできないし、できることといえば、環境を整えたりすることにとどまるということを意味します。生徒は学習者として自分で殻を破ってこちらの世界に来なくてはならないのです。

いかにして殻を破るかは、学習主体の問題です。

でも、だからこそ「悦び」が大きいともいえます。
この「悦び」は、殻の外の世界に至った快感です。
世界が広がるという心地よさ。

これにはまると、人は自ら学びたくなります。
教育サービスを学習論を起点に考えることで、このサイクルにはまった人をどれくらい輩出できるかが、決まってきます。教育サービスの腕の見せ所です。

 

参考文献・引用・注釈

『碧巌録 上・中・下』入矢義高・溝口雄三・末木文美士・伊藤文生 訳注、岩波書店

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