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【RES輪読会】vol.1 〈自由の相互承認〉から考える:『教育の力』苫野一徳 著

教育を社会の「共通資本」と捉えるRESが、『教育の力』(苫野一徳 著)を手がかりに語り合った第1回輪読会の記録です。〈自由の相互承認〉を土台に、学力=「学ぶ力」への転換や個別化×協同化×プロジェクト化の統合、学校空間の再構築、評価のあり方、自治体スケールの学びのネットワークまでを俯瞰し、現場の実感と制度の変化を交差させながら、次の10年を見通します。

なぜ『教育の力』か――〈自由の相互承認〉から

A じゃあ、輪読会の方を始めさせていただきます。RESの輪読会ということですね、Cさんは今回初めてはではいらっしゃると思うんですが、我々の教育のNPOの理念としているのが、教育サービスを社会共通資本として捉えて、いろいろ世の中にある教育サービスを検討する場を提供して、特にサービス提供者間のネットワーク化を促進する。こういう目的で作って、もう2年ぐらいになります。日頃の活動はいろいろとイベントなどをやってるんですが、我々のメンバーの中では輪読会といった形で、何度か教育関係の書籍を読んで、お話をするみたいなことをやってきてるんですけれども、こういった内容を広く、会員とイベントに参加いただいた方々に向けても、開いていこうということで。これはって感じる著作を取り上げて、「共読」、「共読」というのは造語ですけれども、みんなで読み合わせをしていく。こういうことをやろうと思っています。

今回の苫野さんの『教育の力』は、やはりこれを改めて外向けにやるという意味ではですね、すごくベーシックなところを非常にいい形で押さえていただいているということで、苫野さんに始まって、最後、苫野さんに終わるような感じで、今年度は考えています。

ご存知ない方もいらっしゃると思うので、改めて申し上げると、もともと苫野さんは哲学をやられて〈自由の相互承認〉ということを謳うようなところまで今来ていて、そことかなり連動したというか、そこを下敷きにした教育に関する話をされているっていうのが、苫野さんのポイントかなと思います。

著書は、どのような教育がよい教育かとか、自由がいかにして可能かとか、こういったことをかなり多く出されていて、今回の本は(出版年が)やや少し前ですけれども、教育の力ということで、一番要領よくまとまっている本じゃないかなと思います。(そのため)苫野さんの『教育の力』を取り上げていると。

そして、ここからが本題ということで、今日は最初ということも含めてですね、私の方でまとめたこの本についての内容を、RESとしてどう捉えていくべきか、捉えているかというようなところをお話しした上で、適宜ディスカッションとか、意見交換とかできればと思うんですが、Cさんはこの本については多少は目を通されていますか?

C はい、目は通してます。

A そうですか。関心事というか、特にここらへんっていうのがあれば、ちょっとこの時点でよろしければご自分の問題意識とか、そのあたりもせっかくなんで、簡単でいいので、お話しいただけますか?

参加者の自己紹介と関心事

C 承知しました。改めてCと申します。前職は教育系スタートアップにおりました。今は教育コンサルの会社に転職しまして、教育領域のコンサルタントとしてやっております。文部科学省さんであったり、教育委員会さんといったようなクライアントに対して、一緒に授業の、それこそ先生の働き方改革であったり、あとはAIであったり、そのほか、いじめ不登校の問題であったり、多様的な生徒さんをどう支援するか、といったところをご支援させてもらってます。

でも、今回の『教育の力』にも記載がありましたけど、やはり、学級、クラスみたいなところが同質的な考えを植えつけてしまうような、きっかけになってるみたところがあったと思うんですけども、そこは自分の課題認識としてもございまして、私の考えとしては、多様な回答であったり、評価みたいなものをもっと広げていかない限り、生徒さんが同じ方向に向いてしまうであったり、生徒間でこう自分を比較してしまって、ご自分の劣等感であったり、そういった比較の中で、生きてしまうような生徒さんを育ててしまうんじゃないかっていうような、課題認識もあったりしましたので、この本を読みながら共感する課題感みたいなところはいくつかございました。

A なるほど、そういう意味ではプロというか、コンサルティングまでやられているので、問題意識という意味では、先に進んでおったりするんじゃないかと思うんですけど、この苫野さんの話自体はどうですか? どれぐらい理解されている感じですか?

C おおよそ理解はしておりまして、実現したい世界観も、大枠は理解しているのかなと思ってます。実は今、私長野県に住んでて、軽井沢の方にいるんですけど、苫野先生が関わられた風越学園も、少し視察をしたことがございまして、異年齢での学びだったり、あと何でしょうこう少し自由進度で学んでいくような教育の在り方みたいなところも、実際に目をしていまして、すごい自己肯定感の高い生徒さんが多くいらっしゃったので、本を読んで改めて思ったんですけども、こういった教育観みたいなものを実現されたいんだろうなっていうのは、なんとなく感じているところでございます。

A そういうことですね。そうだとするとどうですかね? 今日、そういう意味ではここでの期待感っていうか、ある意味読んで内容はかなり理解されているわけですよね?

C はい。私もずっと教育界に民間から携わってますけど、やはり指導と評価って一体化される中で、どうしても評価って変わりづらい部分があるので、今回の本も読んでも思うんですけど、指導が変わらないと、というのは、皆さん思っているとは思うんですけど、そこがなかなか評価が変わっていかない中で、どう指導を変えていくかみたいなもどかしさもすごいあるので、そこは課題感として感じつつ、おそらく、コンサルでも難しいと思うので、どう民間の力を使いながらこう教育領域を動かしていくのかみたいなところはすごい興味があります。

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